山にのぼる 黒木郁朝さんの版画です。我が家の玄関で、毎日見てから家を出ます。



2013年2月2日土曜日

精神保健福祉士協会研修:自殺対策



研修会名:                                            
第6回 九州・沖縄地区精神保健福祉士協会合同研修 宮崎大会
平成25年2月2日(土)   11:00~16:00 都城(中山荘)にて

「新しいつながりが、新しい解決法を生む
~生き心地の良い社会の実現に向けて精神保健福祉士として何ができるか~」

シンポジスト
・ライフリンク代表 清水氏
・自死遺族支援ネットワーク Re代表 山口氏
・日本精神保健福祉士協会理事 鶴田氏

 自殺対策をテーマに、個別支援からネットワークづくり、社会への働きかけについて様々な立場から考えるシンポジウムでした。
 「自殺」という社会問題に対して、個人、家族、それを取り巻く社会に対しての働きかけについて学びました。ちょっとだけ報告。


1 清水代表の講演:自殺の要因

 清水氏が代表をしているライフリンクは、自殺対策を活動のメインとしたNPO団体で、
個別の相談支援活動や、政策への提言、ネットワークの構築など、幅広く取り組んでいます。
ライフリンクHP http://www.lifelink.or.jp/hp/top.html
 その活動と、統計データをものにして、自殺の原因についてのプロセス、そして背景となる因子についての説明がありました。
 オランダなどのように日本よりも生活水準(経済規模)が低い国であっても、自殺率は低い国もあり、それは、生きるに当たっての阻害要因よりも、生きることの促進要因が高いからだということ。
大平健の『豊かさの精神病理』を思い出しました。
物の便利さ、裕福さではなく、生活、人生における豊かさを持つことが、自殺対策において大事なことだということでした。

2 支援方法
(1)機能的なネットワークづくり
 また、自殺の危機経路として様々な要因がある中で、多くはそれまでに何かしらの相談窓口や医療機関などでサインをだしているといいます。
しかしながら、「相談機関が違ってたらい回し」「複合的な相談に乗ってもらえず、問題が残ったままの状態で還される」「相談先がない」
といった状況の中で、見逃されてしまう状況もあるといいます。
これは、まさに岡村理論の社会関係と同じ整理だと思いました。
そこで、地域の関係機関によるネットワークと連携が重要になるが、
ただネットワークをつくるだけでは、ネットワークは活きないといいます。そうですよね。
ネットワークと合わせて、コーディネート機能を持つ機関を設け、相談者に付き添ってネットワーク内の関係機関を回り、その人が抱える問題をコーディネート・マネジメントする役割を確保することで、ネットワークが機能不全にならないようにするという工夫はいいですね。
包括的に相談をうけ、寄り添っていく支援者を確保することは非常に重要だと思います。
 
(2)支援者の研修
 ネットワークを意識した支援者の研修も非常に勉強になりました。
ネットワーク内の機関の支援者に対しての研修で、
・初級・・・自殺についての知識(ゲートキーパー研修)
・中級・・・傾聴研修(ロールプレイ)
・上級・・・他機関へのつなぎ方を学ぶ他分野合同研修
をするといいます。「自分のところでは」という姿勢ではなく、「どうつなぐか」を意識して目的を共有することは非常に大事だと勉強になりました。
(3)地域の実情を把握した支援
また、地域の実情に合わせて自殺者の構成が違っているという話もありました。
実情に合わせターゲットを見定めることが大事。

(4)個別支援・実践と合わせて地域への普及啓発活動
 そして、実務と併せて、地域に理解を浸透させていくための啓発活動も両輪で行わなければいけません。社会で支える姿勢は、その地域で支え合う価値をつくることだと思います。
対話を通して、その合意を図っていくことは不可欠ですね。

3 シンポジウム
 シンポジウムでは、いろいろ勉強になりましたが、特に印象に残ったことをひとつだけ。
一番に勉強になったのは「予防」ではなく「対策」としての普及啓発・理解促進の取り組みという点。
精神障害の啓発をする際に、早期発見という言葉をよく使いますが、
早めに予防することを前面に出すと、「かかってはいけない」という偏見が生じうるように思い、私自身、その「予防」という言葉に抵抗感を抱いていました。
けれども、山口さんや清水さんの話では、「ライフスキル講座」としておこなうという考えに気づかされました。
 実際に直面したときに、1人でため込まずに誰かに相談できるように、また、自分のサインに気づく、周りのサインに気づくという観点で講座をすることは、非常に有効ではないかと感じたところで、ぜひ、その取り組みをしたいところでした。

勉強になりました。

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