2011年11月25日 市内にて権利擁護の研修会がありました。
講演に来ていただいたのは東洋大学で社会福祉援助技術演習等を教えている高山教授。
その内容をちょっと報告。
1 社会福祉を取り巻く問題:生きづらい社会
社会福祉の主な制度は戦後つくられたものであり、社会の仕組みに合っていないまま現在に至っている。
・悩みや不安を抱えている国民(7割弱)
・自殺者:31,560人
・知的障害者の入所:13万人近く
・精神病社会的入院 72,000人
・児童虐待:50,000件超え(2010年)
※現場でどんなに対応しようとも、国の制度のありかた、社会福祉の考えかたに問題がある。環境そのものが元気になれない中で、スタッフが困っている状況がある。
→権利擁護は個別の対応だけでなく、国の政策を動かすことが大事。
(2)福祉現場における権利侵害
以前は病院や入所施設で起こっていた事件(暴行・着服・強要)が、最近はGHなどの地域の施設でおきている。
→社会的弱者の権利擁護のためにできた専門職集団である社会福祉専門職が侵害・抑圧の加害者になっている。
2 社会福祉援助の価値
(1)社会福祉援助の価値の必要性
社会福祉専門職は、人間に対する見方(人間観)と社会の目指すべきあり方(社会観)を価値として、個人としても組織としてもぶれない価値を確立しなければいけない。
→個人レベルでの「自己決定、参加、協働、連携」から社会福祉独自性である「主体性、旗鼓実現、権利擁護、エンパワメント、ノーマライゼーション、インクルージョン」、そして、社会全体の「個人の尊厳、人権、社会正義、民主主義、平和」、個人的なミクロ視点からマクロな視点まで価値はつながっている。
(2)社会福祉専門職の加害性の認識
社会福祉専門職は人間の「弱さ」に関わる仕事であるからこそ、ともすれば、弱さにつけこむ強者(加害性)になりえる。
※弱さにつけこまないようにするために、価値を身につけなければいけない。
☆全米ソーシャルワーカー協会
①専門職者が自分たちが弱さにつけこみ得ることを自己覚知する。
②自己覚知したうえで価値に基づいて宣言する。
※決意表明をすこことで倫理となる。
※自分たちが今までやってきたことを告白し、それをしないことを倫理綱領で公言する。
3 人権とは何か
(1)人権の考え方
日本では権利(RIGHT)がちゃんと認識されていないといえる。
権利は「発する」ことで保障されるもの。相手の思いを伝わってこそ保障される。
したがって、権利は関係性において構築され、対等な関係においてのみ、権利が保障される。
しかし、主張することで「権利」が衝突し、その際に「折り合い」をつけることが大事になる。
(2)専門職の役割:権利擁護
権利擁護とは、いかに相手の「想い」を汲み取れるかにかかっている。
だからこそ、相手の立場に立って、何を伝えようとしているのかを聞き取り、理解しようとする聴き方が必要になってくる。(傾聴)
(3)当事者主権の考え方
当事者をどのようにとらえるのか、専門職がどう自覚するのかを考えるときに適した概念。
※権利擁護を考える際に、個人の価値だけでなく、チームで支えていくことが重要
・・・・とまぁ、はしょってますが、人権と権利擁護、そして社会福祉援助専門職の価値と倫理について勉強になりました。
日常の業務の中では、本人の自己決定を阻害している専門職(自分)を感じます。
金銭管理を自分でしたいのに、なんとか説得して権利擁護事業にのっけたり、
入院したくないのに入院を説得したり。
「これしか方法がない」という一言を武器に どれだけ阻害しているか。
その価値と現場の狭間で揺れる「揺るぎ(ジレンマ)」こそ、私たち専門職者が大事にすべきプロセスではないかと思います。
揺るぎ(ジレンマ)を感じ、価値に立ち返ることは一人では困難です。
また、「それでいい」と思うのも自分ひとりでは困難です。
揺るぎを共有し、方向性を定めること、その積み重ねが援助専門職には重要なプロセスであり、
また、チームで支える姿勢になるのではないかと思います。
その点で、果たしてうちの専門職協会はどうなっているのでしょう・・・(苦悩)
最初にトップの方が倫理について話をされておりましたが、現場のそのようなジレンマをきちんと共有し、専門職価値に育て上げる取り組みを協会自体でしていかねばいけないように感じます。
また、それこそ市民オンブズマンの養成などの事業を考えなければいけないと思い、最後のシンポジウムでは、どこかしら尻すぼみ感覚になって残念に思いました。
まぁ、なにはともあれ、自分自身が日頃、仕事に携わる中で、自分自身の価値と倫理をしっかりもたなければいけないのは当然の話なので、そこから内省するようにします。